グルジェフ世界紀行

Gurdjieffian Landscape

 

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「千の教会の都」 アニの遺跡
――探求の旅の始まりの地

Ani

アルメニア旧王国の首都で「千の教会の都」として知られていたアニの廃墟(現トルコ領)は、グルジェフが生まれたアレクサンドロポル(当時ロシア/現アルメニア領)とグルジェフが学校に通ったカルス(当時ロシア/現トルコ領)のちょうど中間に位置する。グルジェフは友人のポゴジャンといっしょにこの廃墟のなかに住み込み、古文書を読みあさる研究三昧の日々を送った。ふたりは廃墟の地下道をさぐるなか、ある決定的な発見をし、これがふたりを探求と冒険の旅へと旅立たせる。


教会跡に住み込んだグルジェフとポゴジャンの生活

(グルジェフ『注目すべき人々との出会い』第五章より)

「それまでにポゴジャンと私は、昔の人々はほんとうに<何か>を知っていたのだが、いまではそのような知識は失われてしまっているのだという明白な結論に達していた。われわれは、現代の科学や文献、つまり他の人々からこの知識への手がかりを得ることをあきらめ、もっぱら古代の文献に集中することにした。たまたま古代アルメニア文献の大コレクションに行き当たったポゴジャンと私は、それらの文献に強く興味を引かれ、研究三昧にふけることのできる場所を見つけるためにアレキサンドロポルに移ることにした。そしてアレクサンドロポルに着いた後、それにふさわしい場所として、そこから三十マイル離れたアルメニア旧王国の首都、アニを選んだ……」

 

 アニの廃墟は、実際そのような目的で住み込むにはぴったりの場所だった。屋根が残った教会の建物は雨風や陽射しをしのぐのに最適の場所だし、聖堂の雰囲気も残されている。水浴びに最適の川もあり、川辺にはカパドキアに見られるような岩窟住居の跡もあった。グルジェフとポゴジャンはここでかなりぜいたくに暮らしていたのではないかと思う。写真は大聖堂の内部。

大聖堂のそばにある古いモスクの跡とその内部からの風景


教会都市アニの歴史

 

東方教会大聖堂跡。まわりに何もないので小さく見えるが実際には巨大な建物。

(グルジェフ『注目すべき人々との出会い』第五章より)

「アニは962年にアルメニアのバグラティッド王朝の首都となった。1046年にビザンチン帝国領となったときには、すでに「千の教会の都」と呼ばれていた。その後セルジュク・トルコに占領され、1125年から1209年までの間には、五度にわたってグルジア領となった。1239年のモンゴル来襲のあと、1313年の地震によって壊滅した。余談ながら、廃墟の中には、1010年に完成した東方教会跡や、十一世紀に建造された二つの教会、1215年に完成した教会の遺跡が残っている……」

   

いずれもアルメニア教会跡

アニ全景。広い範囲に教会跡が点在している。


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©Plavan N. Go, 2018  HOME